RPAが注目される背景

RPAが注目される背景

RPAが注目される背景には日本が抱えている様々な社会問題が関係しています。こうした社会問題を解決する手段のひとつとして日本政府はRPAの活用を推進しており、RPAを導入する企業が増えています。このページではRPAが推進されている背景について各種統計データを使いながらお話させていただきます。

→RPAについて簡単な概要を知りたい方はこちら

1. 人口減少による人手不足

総務省が公表している*情報通信白書によると、下図の通り、少子高齢化の進行によって日本の生産年齢人口(15歳~64歳、緑色のバー)は1995年をピークに減少し始め、これは今後も続いていくと考えられています。よく話題にされるのは日本の総人口の減少ですが、総人口が減少し始めた2008年よりも10年以上前から働く人の人口は減っていました。生産年齢人口は毎年50万人前後減っており、3年で神戸市(153万人)と同じくらいの人口がなくなっている計算です。また全人口に対する生産年齢人口の割合も6割を切るなど、日本の人手不足は大きな課題となっています。

生産年齢人口の推移

出典:総務省「情報通信白書平成30年版

下図の1枚目は総務省統計局から発表された2021年の日本の就業率の推移のグラフです。昨今、労働人口減少の対策として、女性活躍やシニア活躍などがよく話題になりますが、グラフから読み取れることとして、この10年で日本の女性就業率は労働年齢層(15~64歳)で10%近く上昇し、65歳以上でも5%ほど改善しています。シニア層全体の就業率も6.6%上昇しており、女性やシニアの活躍といった施策は一定の成果を出していると言っても良いでしょう。実際に下図2枚目の労働力人口の推移を見ると、生産年齢人口の減少に対し、実際に働いている人数はむしろ増加している年もあるということがわかると思います。

就業率の推移

労働力人口の推移

出典:総務省統計局「労働力調査(基本統計)2021年

一方、*下図のグラフは*中小企業におけるAI、IoT、ビッグデータ、RPAなどの先端技術の認知率と活用率のグラフですが、AI、IoT、ビッグデータという言葉は、認知率が80%を越えてきてはいるものの、活用している企業はIoTの5.3%が最大で、まだまだ実用段階には入っていないということがわかると思います。RPAに至っては認知度が59.3%と認知も十分ではないという段階です。RPA含む先端技術の活用は人手不足の解決策としてより強く推し進められていくでしょう。

ITキーワード別の認知率と活用率

出典:経済産業省「中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

2. 労働生産性の低迷

日本の1人当たりの労働生産性は*2021年時点で先進国を中心に加盟されているOECD38国中28位(時間当たりの生産性は23位)となっており、平均を大きく下回っています。この水準はポーランドやエストニアなどと同水準で、アメリカの労働生産性の6割ほどに留まっており、他の先進諸国と比べると大きく水をあけられている状態となっています。また主要先進7か国で構成されるG7では統計を開始して以来、最下位が続いており、日本の生産性向上は長年の大きな課題となっています。

主要先進7か国の時間当たり労働生産性の順位の変遷

出典:公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2021

こうした課題の解決策としてRPA、AI、ビッグデータ、IoTなどの先端技術は大きく注目されています。下図は*2017年の経済産業省から出された中小企業白書の抜粋データです。先端技術を活用している企業が59.2%の割合で労働生産性が向上していると答えているのに対し、先端技術を取り入れていない企業は43.0%と15%以上も結果に差が出ていることがわかります。

先端技術(AI、ビッグデータ、IoT、RPA)の活用有無と労働生産性

出典:経済産業省「中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

また、先端技術の活用は労働生産性の向上を通して、会社の利益にも影響を与えており、先端技術を取り入れている企業は取り入れていない企業に比べて経常利益(本業で儲けた営業利益 + 営業外利益)が増加傾向にあると答えた割合が10%ほど多くなっていることが読み取れます。

先端技術(AI、ビッグデータ、IoT、RPA)の活用有無と経常利益額

出典:経済産業省「中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命

今後も、生産年齢人口の減少が続いていくと見られている中で、労働生産性の向上は今まで以上に重要な課題となってくると考えられます。RPAを含む先端技術の活用は、労働生産性向上の解決策として大きく期待されています。

3. DXの推進

上記のような人口減少、労働生産性の低迷を背景として、経済産業省を中心にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)が推進されています。DXとはスウェーデンのウメオ大学教授であるエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した概念で、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」と定義しており、2018年に経産省は「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」とより具体的に定義し、積極的な推進をしております。

下図はIPA(情報処理推進機構)の「DX白書2021」の抜粋データです。日本ではDXに取り組んでいると回答した企業が55.8%、アメリカは79.1%となっており、本格的にDXを取り込み始めたところと言えます。実際に効果が出始めている企業は日本が70.1%、アメリカは84.1%と大きく割合が変わらないのに対し、十分に効果が出ている企業については、日本は17.0%、アメリカは56.7%と大きく差があることからも日本はこれから本格化していくということがわかることと思います。ただ、一方で、DXに取り組んだ企業のうち、日本企業の27.9%が成果についてわからないと回答しており、DXの取り組みに対する評価が適切にできていない企業も多くあります。

DXへの取組状況

デジタライゼーションへの取組と成果

DX取組の成果

出典:情報処理推進機構「DX白書2021

こうしたDX化を推進する上での課題に人材の確保があります。諸外国に比べて日本はDX推進の人材が質、量ともに不足していると言われており、アメリカでは人材の「過不足がない」という回答が「量」に対して43.6%、質に対して47.2%であったのに対して、日本は量が15.6%、質が14.8%とDX人材は大きく不足しています。また、社員が先端技術領域を学ぶ機会に関する方針に関しても、日本企業の46.9%が検討すらしていないのに対し、アメリカの企業は37.4%が全社的に取り組んでおり、企業自体も現状では学ぶ機会を与えるような組織作りができていないのが現状です。このような組織体制であることから、社員のITリテラシーにも大きな差がついており、日本ではITに関して把握できていると答えた社員の割合が39.8%に対し、アメリカでは80.8%と2倍以上の差がついています。会社役員レベルの比較でも日本でITに見識のある役員の割合が5割以上の企業は12.8%と、アメリカの34.7%とは大きな差があります。とはいえ、人口減少、労働生産性の低迷など様々な問題を抱える日本においてRPAを含むDXが推進されていくという流れはこれからも続いていくと考えられるでしょう。

事業戦略上、変革を担う人材の「量」の確保

事業戦略上、変革を担う人材の「質」の確保

社員の学びの方針(学び直し)

ITリテラシ―レベルの認識・把握

ITに見識がある役員の割合

出典:情報処理推進機構「DX白書2021

以上、RPAの背景について説明させていただきました。もっとRPAについて知りたいという方の以下のリンク先をクリック!RPAについての理解をもっと深めていきましょう!

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執筆者プロフィール

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伊藤 丈裕

(株)サムテックのシステムエンジニア。応用情報技術者資格保有。
27歳の時、営業から完全未経験で転職。開発とWebマーケティングを担当。得意言語はJavaとJavaScript。

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